「親の物忘れが少しずつ増えてきた。認知症が進むと実家が財産凍結されると聞いて、何から手を打てばいいか迷っている…」
「家族信託という言葉を聞いたけれど、何ができて、何ができないのかピンとこない…」
「費用が30万から100万円と幅があると聞いて、自分の家でも使えるのか判断がつかない…」
ご両親の判断能力が下がってきたとき、「実家を売る・貸す・住む」のいずれの選択肢も、ご本人の意思確認ができないと進められなくなります。これが 「認知症による財産凍結」 と呼ばれる状態です。
この凍結を避ける手段の一つとして、近年広がっているのが 家族信託(民事信託) です。本記事では、信託法に基づく基本構造、費用の内訳、成年後見との違い、そして契約前に知っておきたい3つの注意点を整理しました。「家族信託って、うちで使えそうか」の判断材料としてご利用ください。

家族信託は「委託者・受託者・受益者」の3人で成り立つ仕組み
家族信託は 信託法 に基づく契約で、財産の所有者と、管理を任される家族と、利益を受ける人の 3人の役割 で成り立ちます。
役割 | 誰が担うか | 何をするか |
|---|---|---|
委託者 | ご両親(財産の所有者) | 信託する財産(実家・預金など)を渡す |
受託者 | 信頼できるご家族(多くは子世代) | 信託財産を管理・処分する |
受益者 | 多くは委託者ご本人(または配偶者) | 信託財産から生じる利益を受け取る |
実家の場合、 「親(委託者)が、子(受託者)に、実家の管理を任せ、その実家から生じる利益(家賃や売却代金)は親本人(受益者)が受け取る」 という形が基本パターンです。
委託者ご本人の判断能力があるうちに契約を結んでおくと、その後に認知症が進んだとしても、受託者である子世代が実家を 売却・賃貸・修繕 できる状態が維持されます。これが家族信託のいちばんの強みです。
出典:なるほど!ジョブメドレー|認知症に備える家族信託とは?
認知症と「財産凍結」|なぜ家族信託が選ばれるのか
「財産凍結」と聞くと差し押さえのように響きますが、認知症の文脈では 「ご本人の意思確認ができないため、銀行・不動産取引・契約手続きが進められなくなる」 という意味で使われます。
具体的に手続きが進められなくなるのは次のような行為です。
これらはすべて 「ご本人の意思」 を前提に組まれた仕組みです。判断能力が低下してからの選択肢は、家庭裁判所を通じた 成年後見制度 に限られてしまいます。成年後見は財産保護を優先する制度で、 不動産の柔軟な処分は難しくなる ことが一般的です。
家族信託は、この凍結を 契約段階で予防 する仕組みとして位置づけられます。判断能力があるうちに「将来こうしたい」を契約に落とし込んでおけば、認知症が進んだ後も計画どおりに進められます。
家族信託の費用|総費用30〜100万円の内訳
家族信託にかかる費用は、 信託する財産の金額 と 不動産が含まれるか で大きく変わります。専門家(司法書士・行政書士・弁護士)に依頼した場合の主な内訳は次のとおりです。

項目 | 費用の目安 |
|---|---|
コンサルティング報酬(信託組成費) | 信託財産の 1.1%(最低33万円) |
公正証書作成費(公証人手数料) | 3.3〜11万円 |
登録免許税(不動産の信託登記) | 固定資産評価額の 0.3〜0.4% |
司法書士報酬(不動産登記) | 11〜16.5万円 |
試算例
信託財産:現金3,000万円のみ → 合計約 49万円
信託財産:実家+現金3,500万円 → 合計約 73.5万円
ご自身で手続きを進めた場合は実費のみで約 20万円前後 に抑えられますが、 信託口口座の開設で銀行審査に通らない、 登記実務の難度が高い といったハードルがあります。実務の現場では、専門家依頼が選ばれることが多いです。
契約前に知っておきたい3つの注意点
家族信託は便利な仕組みですが、契約後に「こんなはずでは」とならないよう、 3つの本質的な制約 を最初に把握しておきたいところです。

注意点①|身上監護は家族信託では行えない
家族信託でカバーできるのは 財産管理だけ です。次のような 身上監護(生活面の手続き) は対象外で、受託者の権限ではできません。
介護施設への入所契約
入院・手術の同意
要介護認定の申請
医療同意
ご家族の状況に応じて、 任意後見制度 と組み合わせる構成が現実的です。財産は信託で、生活手続きは任意後見で、と役割分担するイメージです。
注意点②|不動産の損益通算ができなくなる
信託した不動産から赤字(修繕費が家賃を上回るなど)が出ても、 他の所得と相殺する「損益通算」が原則できなくなる という税務上の制約があります。さらに、翌年への赤字の繰越も認められません。
実家を 賃貸転用する予定がある 場合、修繕タイミングを契約前に予測しておかないと、思わぬ税負担が出ることがあります。賃貸ではなく 自宅・空き家のまま保有 する目的の信託であれば、この影響は受けません。
注意点③|契約後は内容変更が利かなくなる
委託者ご本人の判断能力が下がった後は、信託契約の内容を 原則として変更できません。「あの時こうしておけばよかった」が後から効かない仕組みです。
将来想定される変化(介護費用の増加、相続人の状況変化、税制改正など)に備え、契約設計の段階で 受託者に柔軟な権限 を持たせるか、 変更条項を組み込んでおく ことが大切です。経験豊富な専門家を選ばれると、こうした条項設計の質が変わってきます。
成年後見との違い|あなたにとってどちらが向いているか
家族信託と成年後見は「認知症対策」として並べて語られますが、得意分野が異なります。
観点 | 家族信託 | 成年後見(法定) |
|---|---|---|
開始タイミング | 判断能力があるうちに契約 | 判断能力が下がってから家庭裁判所に申立て |
財産処分の柔軟性 | 契約で広く設計可能 | 家庭裁判所の許可が必要(不動産売却は特に厳しい) |
身上監護 | できない | できる |
費用 | 初期費用30〜100万円、後は受託者報酬を家族で調整 | 専門職後見人の月額報酬2〜6万円が継続 |
監督機関 | なし(信託監督人を任意で設置可) | 家庭裁判所の監督 |
実家を 柔軟に売却・賃貸できる状態にしておくこと が目的なら家族信託、 本人の生活支援 を中心に考えるなら成年後見、というのが大まかな使い分けです。 「財産は信託、生活は任意後見」 の併用構成が、近年もっとも安定して選ばれている形です。
サントが対応できること
株式会社サントは、大阪府東部(東大阪市・八尾市・大阪市東部)を中心に、空き家の買取・再販・解体を自社で一貫対応しています。家族信託については、 リーガルパートナー(司法書士・行政書士・税理士)との連携体制 を整えており、 組成のご相談から、信託登記後の不動産処分まで、ご家族の窓口として一貫してお手伝い できます。
家族信託の組成相談:ヒアリングから設計案のご提案、リーガルパートナーへのお取次ぎまで一括対応
信託前後の比較査定:「いま売る」「信託してから売る」「信託せず保有」の3パターンで試算
信託登記された実家の売却・買取:信託受託者からの売却にもそのまま対応
狭小地・底地・借家人付き物件:信託対象として扱いに迷う物件もご相談ください
FAQ
Q1. 親が認知症と診断されてからでも家族信託は組めますか?
判断能力の程度によります。 軽度認知障害(MCI) など、契約の意思表示ができる範囲なら可能なケースもあります。ただし、後で「契約時に判断能力がなかった」と争われるリスクを避けるため、 主治医の診断書 を取り、公証人の面談を経るのが一般的です。重度の認知症の段階では、成年後見制度を選ぶことになります。
Q2. 家族信託をすると相続税は安くなりますか?
直接的な節税効果はありません。信託財産は受益者の相続財産として通常どおり課税されます。家族信託の主目的は 「認知症による財産凍結を避けること」「実家の柔軟な処分」 であって、節税ではない、と整理されるのが現状です。
Q3. 受託者になった子が、勝手に実家を売ったり使い込んだりしないか心配です
受託者には 善管注意義務・分別管理義務・帳簿作成義務 が課されており、違反すれば個人財産での賠償責任を負います。さらに、契約時に 信託監督人 を任意で設置し、第三者がチェックする構成も可能です。家族間の信頼が揺らぐリスクを抑えたい場合、監督人の設置を検討されると安心です。
Q4. 家族信託の契約後、内容を見直すことはできますか?
委託者ご本人の判断能力があるうちは変更可能です。判断能力が下がった後は 原則として変更できない ため、契約設計の段階で受託者に柔軟な権限を渡すか、変更条項を組み込んでおく必要があります。
Q5. 実家を信託せずに、売却してしまったほうが早くないですか?
ご家族の判断によります。「親御さんがまだ実家に住み続けたい」「将来の介護で資金が必要になりそう」など、 柔軟性を残したい場合 は家族信託が向きます。一方、 すでに実家が空き家 になっていて、将来も住む予定がないのであれば、 判断能力があるうちに売却してしまう のも一つの選択肢です。サントでは「いま売る」「信託してから売る」の比較試算もご相談に乗っています。

まとめ|「親御さんの判断能力があるうち」が判断のタイミング
家族信託は、認知症による財産凍結を 契約段階で予防する 仕組みです。委託者・受託者・受益者の3人で成り立ち、信託する財産の中身によって費用は 30〜100万円 程度。実家のこれからを柔軟に判断していきたいご家族にとって、有力な選択肢になります。
ただし、 身上監護はできない・損益通算が制限される・契約後の変更が利かない という3つの本質的な制約があります。これらを踏まえて、 任意後見との併用 や 柔軟な契約設計 を、経験のある専門家とご検討ください。
判断のタイミングは 「親御さんの判断能力があるうち」。物忘れが少しずつ気になり始めたら、信託にするか、いま売却するか、ご家族で並べて検討される時期かもしれません。
東大阪・八尾・大阪市の空き家相談はサントへ
株式会社サントは、大阪府東部を中心に空き家の買取・再販を行ってきました。家族信託の組成相談(リーガルパートナーと連携)から、信託登記済み物件の売却・買取まで、ご家族の窓口として一貫してお手伝いいたします。査定・ご相談は無料、ご家族での話し合いの判断材料としてもご利用ください。
