「隣の空き家の木が伸びてきて、うちの屋根や雨樋にかかっている」

「雨樋からの水が、自宅の敷地に落ちてくる」

「お願いしたいけれど、持ち主の方と連絡が取れない」

空き家が増えるなかで、このような庭木・雨樋まわりのご相談は少なくありません。特に、遠方に住む方が相続した実家や、しばらく管理されていない戸建てでは、枝葉や雨樋の不具合がご近所の方との小さな行き違いにつながることがあります。

この記事では、庭木の越境を扱う民法233条と、雨水の落水を扱う民法218条をもとに、空き家まわりで起きやすいトラブルの基本ルールと、実際に動くときの順序を整理します。

まず押さえる2つの条文

庭木の枝・根のはみ出しは民法233条、屋根や雨樋からの水落ちは民法218条が中心になります。どちらも「お隣同士の土地利用」を調整するためのルールですが、できることは少し違います。

民法233条|枝は原則「相手に切ってもらう」

民法233条では、隣地の竹木の枝が境界線を越えるとき、土地の持ち主の方は竹木の持ち主の方に枝を切除させることができる、と定めています。

2023年4月1日施行の改正により、原則は「相手に切ってもらう」のままですが、次の3つのいずれかに当たる場合は、越境された側が自ら枝を切り取れるようになりました。

自ら切除できる場合

内容

催告しても切除されない

竹木の持ち主の方に切除をお願いしたが、相当期間内に対応されない

持ち主・所在が分からない

竹木の持ち主の方を知ることができない、または所在を知ることができない

急迫の事情がある

折れた枝が落ちそう、台風後で危険があるなど、すぐに対応が必要

一方、根が境界線を越えている場合は、枝とは違い、催告なしに切り取ることができるとされています。

出典: e-Gov法令検索 民法 第233条

民法218条|雨水を直接隣地に落とす構造は避ける

雨樋・屋根からの落水は、民法218条が関係します。

民法218条では、土地の持ち主の方は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない、と定められています。

つまり、雨樋が壊れてお隣の敷地へ水が落ちている、屋根の形状によって雨水が直接流れ込んでいる、といった場合は、構造や管理状態の改善を求める話になります。庭木の枝のように「こちら側で切る」というより、事実を記録し、改善をお願いする手順が中心です。

出典: e-Gov法令検索 民法 第218条

改正前と改正後で何が変わったか

民法233条改正の大きなポイントは、越境した枝について、一定の場合に自ら切除できるルートが明文化されたことです。

観点

改正前

改正後

越境した枝

原則として竹木の持ち主の方に切ってもらう

原則は同じ。ただし3要件のいずれかで自ら切除できる

対応されない場合

訴訟や強制執行が必要になることもあった

催告後、相当期間が過ぎれば自ら切除できる余地

持ち主が不明の場合

手続きが長期化しやすい

所在不明の場合の対応ルートが明文化

急迫の事情

緊急対応の根拠が分かりにくかった

急迫の事情がある場合が明記された

自治体の案内では、枝が数本越境している程度であれば、催告後の「相当の期間」は基本的に2週間程度と説明されています。ただし、樹木の大きさ、枝の量、安全性、相手方との連絡状況によって判断は変わります。

出典: 福生市 民法第233条の改正について

自ら枝を切る前に確認したい3つの手順

法律上できる余地があるとしても、いきなり枝を切ってしまうのは避けたいところです。後から「勝手に切られた」と受け止められると、ご近所の方との関係がこじれることがあります。

1. 越境の状況を記録する

まずは写真や動画で、どの枝がどの程度越境しているかを記録します。できれば、境界を示すブロック塀・フェンス・境界標などが写る角度で撮っておくと、後から状況を説明しやすくなります。

記録しておきたい内容は次の通りです。

2. 持ち主の方に文書でお願いする

連絡先が分かる場合は、まず竹木の持ち主の方へ切除のお願いをします。口頭だけでなく、文書やメールなど、後から確認できる形で残すのが安心です。

書面では、感情的な表現を避け、次のように事実とお願いを分けて伝えます。

書く内容

状況

庭木の枝が境界を越え、当方建物の雨樋付近にかかっています

お願い

越境部分の剪定をご検討いただけますでしょうか

期限

〇月〇日ごろまでにご対応またはご連絡いただけますと幸いです

添付

状況写真、位置が分かる簡単な図

3. 所在不明や急迫の場合は専門家・窓口にも相談する

持ち主の方が分からない場合や、枝が折れかかっているなど危険がある場合は、自ら切除できる余地があります。ただし、自己判断で進める前に、調査記録を残し、必要に応じて自治体の空き家相談窓口、弁護士、司法書士などに確認しておくと安全です。

空き家から越境している竹木については、自治体から持ち主の方へ連絡できる場合もあります。すぐに切るかどうかだけで考えず、行政窓口や専門家を挟めるかを確認しておくと、後のトラブル予防につながります。

雨樋・屋根からの落水はどう進めるか

庭木の枝と違い、雨樋や屋根からの落水は、こちら側で何かを切除する問題ではありません。雨水がどこから、どのように、どの程度落ちているかを確認し、改善をお願いする流れになります。

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルにも、隣地からの雨水・泥水の流入に関する相談事例が掲載されています。

実務上は、次の順序で進めると整理しやすくなります。

  1. 雨の日に、落水の様子を写真・動画で記録する

  2. 雨樋の破損、傾き、詰まり、屋根の形状などを確認する

  3. お隣の方へ、書面で改善のお願いをする

  4. 進展がなければ、住まいるダイヤルや自治体の住宅相談窓口に相談する

  5. 解決が難しい場合は、弁護士に相談して調停・訴訟も検討する

大切なのは、最初から対立姿勢を取らないことです。「困っています」ではなく、「この位置に雨水が落ちているので、構造を一緒に確認したい」という伝え方の方が、話し合いに進みやすくなります。

出典: 住まいるダイヤル 隣地からの雨水・泥水の流入

自分の空き家が越境していないかも確認する

ここまでは、越境された側の視点で見てきました。ただ、空き家や相続した実家を遠方からお持ちの方は、逆にご自身の敷地からお隣へ越境してしまっている可能性にも注意が必要です。

見回りの際は、次の点を確認しておくと安心です。

枝の越境を早い段階で整えておけば、雨樋の破損、外壁の傷、落葉の詰まりといった次のトラブルを防ぎやすくなります。空き家は「気付いたときには範囲が広がっていた」ということが起きやすいため、年に数回でも外まわりを見る習慣があると安心です。

サントの現場視点

関西の戸建て・狭小地・長屋の買取や解体では、隣地との距離が近く、庭木や雨樋まわりの確認が必要になることがあります。東大阪・八尾・大阪市内では、軒先と境界線が近い物件も多く、解体や整地の段階で初めて越境に気付くケースもあります。

株式会社サントでは、空き家買取の査定時に、建物の状態だけでなく、境界まわり、植栽、雨樋、残置物の状況もあわせて確認しています。必要に応じて、庭木撤去、残置物整理、解体工事まで見通したうえで、現況のままご相談いただけます。

なお、法律上の交渉や代理行為が必要な場合は、弁護士などの専門家へ確認することが大切です。サントでは、工事前のご挨拶や日程共有など、実務面での調整を丁寧に進めることを重視しています。

FAQ

Q. 越境してきた枝を、催告なしに切ってしまってもよいですか?

A. 急迫の事情がある場合や、持ち主の方・所在を知ることができない場合など、民法233条3項に当たるケースでは自ら切除できる余地があります。ただし、通常はまず催告が基本です。写真や書面の記録を残し、判断に迷う場合は専門家へ相談してください。

Q. 切除費用は誰が負担しますか?

A. 越境した枝の切除費用は、基本的には竹木の持ち主の方に請求できると考えられています。ただし、実際に支払ってもらえるか、どのように請求するかは個別事情によります。費用が大きい場合は、事前に見積書や写真を共有し、専門家にも確認すると安心です。

Q. お隣の家が空き家で連絡先が分かりません。

A. まずは法務局で登記事項証明書を取得し、登記上の持ち主の方を確認します。それでも所在が分からない場合は、郵便の不達記録や調査経緯を残しておきます。自治体の空き家相談窓口から連絡できる場合もあるため、いきなり自己判断で進めず、窓口にも相談してみてください。

まとめ

空き家の庭木・雨樋トラブルは、放っておくとご近所の方との関係に影響しやすい一方、早めに記録し、段階を踏んで相談すれば、落ち着いて解決しやすい問題でもあります。

庭木の越境は民法233条により、催告・所在不明・急迫の事情という3つの場面で自ら切除できる余地があります。雨樋や屋根からの落水は民法218条をもとに、構造や管理状態の改善をお願いする流れになります。

空き家や相続した実家をお持ちの方は、越境された側だけでなく、越境してしまっている側になっていないかも確認しておきましょう。外まわりの小さな点検が、後の大きなトラブルを防ぐ第一歩になります。

東大阪市・八尾市・大阪市で越境まわりにお困りの方へ

株式会社サントでは、東大阪市・八尾市・大阪市を中心に、空き家買取、庭木撤去、残置物整理、解体工事のご相談を承っております。

長屋・連棟・狭小地など、関西の戸建て事情に合わせて、現況のまま確認できます。「お隣に話を切り出しづらい」「相続した実家が遠方で見に行けない」という場合も、まずは状況整理からご相談ください。

本記事は一般的な情報提供です。個別の法律判断が必要な場合は、弁護士・司法書士などの専門家へご相談ください。

ご連絡の際は「空き家問題研究所の記事を見ました」とお伝えください。

■LINEでのご相談 https://page.line.me/217gbcew

■お電話でのご相談 06-6789-1116 受付時間:平日9:00〜17:00

出典・参考リンク