相続した実家を売っても、税金がごっそり引かれるだけ…」
解体費用も上がっているし、売却の話を進める前に確認しておきたいことがある」
「税制優遇があると聞いたけれど、要件が複雑そうで踏み出せない」

相続した実家をお持ちのご家族から、こうしたご相談が寄せられます。相続した実家の売却には、上手に活用すれば 最大で約609万円 の税負担を減らせる特例があります。それが 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、通称 空き家3,000万円特別控除 です。

期限は 2027年(令和9年)12月31日まで の譲渡。国税庁の公式資料をもとに、要件・2024年改正のポイント・実例での節税額まで、順を追ってご紹介します。

空き家3,000万円特別控除の全体像

まず結論として|期限2027年12月末、控除額は最大3,000万円

空き家3,000万円特別控除は、相続した 相続人(亡くなった親御さん)の居住用家屋 を売却したときに、譲渡所得から最大 3,000万円 を差し引ける制度です。

  • 控除額:譲渡所得から最大3,000万円
  • 期限:2027年12月31日までの譲渡
  • 対象:1981年5月31日以前に建てられた戸建てで、被相続人が1人で暮らしていた家
  • 節税額:譲渡所得3,000万円のとき、税金 約609万円 → 0円(最大シナリオ)

要件は5つあり、そのすべてを満たす必要があります。1つでも欠けると使えません。ですが、要件はすべて客観的な数字や事実で判断できるため、あらかじめ確認しておけば「知らなかったから使えなかった」という取りこぼしを防げます。

なぜ国はこの控除を用意しているのか

背景にあるのは、全国で増加している空き家問題です。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%となっています。空き家は放置すれば倒壊・治安・衛生・景観の問題につながるため、国は 相続後の売却を後押しする税制優遇 を用意しました。

つまりこの控除は、「相続した実家を売却して市場に戻す」ご家族への支援策です。売却をご検討中のご家族には、税負担を減らして次の一歩に進む後押しとなります。

5つの要件を、順番に確認していきます

特例を使うには、次の5つの要件をすべて満たすことが必要です。1つずつ見ていきましょう。

要件1|1981年5月31日までに建てられていること

対象は 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋 です。この日付は、建築基準法の耐震基準が大きく改正された「新耐震基準」の施行日(1981年6月1日)を境にしています。

新耐震基準以前の建物は、そのまま流通させると耐震性の問題があるため、国は「解体して更地で売却するか、耐震改修して売却する」ご家族を税制で後押ししています。1981年6月1日以降に建てられた家は、この特例の対象外です。

確認方法は、法務局で取得できる 建物の登記事項証明書(旧登記簿謄本)の「原因」欄に記載されている建築年月日で判断できます。

要件2|マンション(区分所有建物)ではないこと

対象は 戸建て住宅 です。マンションやアパートなど、区分所有登記がされている建物は対象外となります。ただし、戸建てを共有名義で相続した場合は対象になります。

要件3|お亡くなりになった親御さんが1人で暮らしていた

相続の直前に、被相続人(亡くなった親御さん)が その家に1人で住んでいた ことが要件です。ご夫婦で住んでいた場合や、お子さん夫婦と同居していた場合は、原則として対象外となります。

ただし、次のような場合は「1人で住んでいた」と認められます。

  • 被相続人が 要介護認定を受けて老人ホームに入所 した後、亡くなるまで空き家だった
  • 老人ホーム入所後も、家財の管理などのために本人がときどき戻っていた

老人ホーム入所の場合は2019年の改正で追加された救済措置です。お亡くなりになる直前まで自宅にいた必要はなく、老人ホームに入所していた期間も要件を満たします。

要件4|売却価格が1億円まで

売却価格(譲渡対価)は 1億円以下 である必要があります。ご兄弟姉妹がいらっしゃる場合など、相続人が複数の場合は、全員の受取合計額 で1億円の基準を判定する仕組みです。

例えば、ご兄弟3人で相続した実家を9,000万円で売却し、それぞれ3,000万円ずつ受け取った場合、合計9,000万円 < 1億円 なので要件を満たします。しかし、11,000万円で売却してご兄弟で分けた場合は、1人あたり3,700万円弱でも合計が1億円を超えるため要件外となります。

要件5|相続から3年後の12月末までに売却完了

相続開始の日から 3年を経過する日の属する年の12月31日まで に売却完了する必要があります。

例えば、2025年6月に相続が発生した場合、期限は「2025年から3年後 = 2028年」の12月31日までです。2028年12月31日までに、売買契約 → 引き渡し → 所有権移転登記 まで完了している必要があります。

不動産の売却は、査定 → 販売活動 → 契約 → 引き渡しまで一般的に半年から1年かかります。要件5の期限は「相続後3年」で余裕があるように見えますが、耐震改修や解体を挟む場合はさらに時間がかかるため、早めの検討が安心です。

空き家3,000万円特別控除の5つの要件まとめ

耐震基準の壁と、2024年改正で変わったこと

要件1〜5に加えて、もう一つ重要なのが 耐震基準 です。1981年5月31日以前の建物は現行の耐震基準を満たしていないことが多いため、次のいずれかを満たす必要があります。

  1. 売却時点で現行の耐震基準に適合している(耐震改修済み)
  2. 売却前に家屋を取り壊して、更地の状態で売却する

従来、この耐震基準の要件があるために 売主側で耐震改修または解体を行ってから引き渡す 必要があり、事前負担が発生していました。改修費用は数百万円、解体費用も坪あたり4〜6万円程度かかります。この負担が、特例活用の大きなハードルとなっていました。

2024年改正で柔軟化された「翌年2月15日まで」ルール

令和6年(2024年)1月1日以降に売買契約する場合、次のとおり要件が緩和されました。

改正前改正後(2024年1月〜)
売主が引き渡し前に耐震改修または解体を完了する必要があった 引き渡し後、翌年2月15日まで に買主が耐震改修または解体を完了すればOK

この改正により、買取再販業者が建替え前提で買うケースでも、売主側の事前負担なしに特例が使えるようになりました。買主側で解体・改修に対応する進め方もあり、ご家族が現況のまま売却しやすくなっています。

ただし、翌年2月15日までに完了する義務は買主にあります。契約書には 「買主が期限内に改修または解体を行う」ことを明記 し、期限内に完了しなかった場合の対応も定めておくと安心です。

節税額のシミュレーション|控除アリとナシで何がどう変わるか

「最大約609万円の節税」というのは、どのような場合の話なのか。実例で見ていきます。

シミュレーション1|東大阪市の築45年の実家を1,800万円で売却

両親と同居していなかったご長男が、東大阪市の実家(1980年築、木造戸建て)を相続し、1,800万円で売却した場合で比較します。取得費が不明のため、概算取得費(売却価格の5% = 90万円)を用います。

控除なし(要件を満たさない場合)

区分金額
売却価格1,800万円
取得費(概算5%)90万円
譲渡費用(仲介手数料等)約100万円
譲渡所得1,610万円
譲渡所得税・住民税(長期20.315%)327万円

控除あり(空き家3,000万円特別控除を適用)

区分金額
売却価格1,800万円
取得費(概算5%)90万円
譲渡費用約100万円
譲渡所得1,610万円
特別控除△1,610万円(3,000万円まで控除可)
課税譲渡所得0円
税金0円

この場合、約327万円の節税 となります。1,800万円の売却では譲渡所得が3,000万円に届かないため、控除枠は使い切りませんが、税金がまるごとゼロになります。

シミュレーション2|譲渡所得が3,000万円ジャストの場合

より高額な売却で、譲渡所得が3,000万円ちょうどになる場合を見ていきます。

  • 控除なし:3,000万円 × 20.315% = 約 609万円 の税負担
  • 控除あり:3,000万円 − 3,000万円 = 0円 → 税金 0円

この 約609万円 が「最大約609万円の節税」の根拠です。譲渡所得が3,000万円ちょうどの売却では、控除枠を最大限に活用できます。

空き家3,000万円特別控除の節税額シミュレーション

シミュレーション3|譲渡所得が3,000万円を超える場合

譲渡所得が3,000万円を超える場合、超過分には課税されます。例えば、譲渡所得4,000万円の場合:

  • 控除なし:4,000万円 × 20.315% = 約 812万円
  • 控除あり:(4,000万円 − 3,000万円)× 20.315% = 約 203万円
  • 節税額:約 609万円

譲渡所得が3,000万円を超えても、控除は3,000万円まで使えます。より高額な売却でも、節税額の上限は約609万円となります。

この控除が使えなくなる、注意したい5つの場面

要件をすべて満たしていても、次のいずれかに該当すると特例が使えなくなります。

  1. 親子・夫婦など特別の関係がある人への売却:いわゆる身内取引は対象外です。孫、生計を一にする親族、内縁の妻・夫、同族会社なども含まれます。
  2. 相続後に事業用・賃貸用に供した:相続後に「とりあえず1年だけ賃貸」に出した場合や、事務所・店舗として使った場合は対象外です。
  3. 相続後にご家族が住んだ:お子さんやお孫さんが住んだ場合も、居住用に供したことになり対象外となります。
  4. 他の3,000万円控除と重複適用:ご自身のマイホーム売却の3,000万円控除と、同じ年で重複しては使えません。ただし合計で6,000万円まで控除できるわけではなく、それぞれの対象財産に上限3,000万円ずつです。
  5. 相続財産の取得費加算の特例と重複相続税の一部を取得費に加算する特例(措法39条)とは選択適用となり、両方は使えません。どちらが有利かは事前にご確認ください。

特に注意したいのは 「相続後に賃貸に出した」場合 です。「空き家のまま置いておくのはもったいないから、少しだけ貸そう」と考えるご家族もいらっしゃいますが、その時点で3,000万円控除は使えなくなります。売却をご検討中なら、相続後は空き家のまま維持することが必要です。

よくあるご質問|FAQ

Q1. 1981年6月1日以降の建物は本当に対象外ですか?

はい、対象外です。この日付は建築基準法の新耐震基準の施行日で、税制上も明確な線引きとなっています。ただし、1981年6月以降の建物でも、耐震性・省エネ性の要件を満たすリフォーム済み物件なら「マイホーム売却の3,000万円控除」など他の特例が使える場合があります。税理士にご確認ください。

Q2. 相続人が3人以上の場合、控除はどう計算されますか?

令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡から、相続人が3人以上の場合は 控除額が1人あたり2,000万円 に減額されます(改正前は1人3,000万円)。相続人が2人の場合は改正前と同じく1人3,000万円で、合計6,000万円まで控除できます。

Q3. 老人ホームに入所していた親の実家でも適用できますか?

はい、2019年改正で救済されました。次の条件を満たせば適用可能です:
① 被相続人が要介護認定・要支援認定を受けて特定施設に入所している
② 入所後も家財管理などで本人がときどき戻っていた
③ 事業・賃貸・他人居住に供されていない
老人ホームでお亡くなりになったご両親の実家でも、この特例を使える可能性があります。

Q4. 相続後に「とりあえず1年だけ賃貸」に出した場合はどうなりますか?

残念ながら特例の対象外となります。相続開始から売却まで、その家屋は 「事業・賃貸・他人居住に供されていないこと」 が要件です。「短期間だけの賃貸」も対象外です。3,000万円控除の利用をお考えなら、相続の後は他人にお貸しせず、そのままの状態で売却へ進めることが要件となります。

Q5. 確定申告は自分でできますか?

ご自身での確定申告は可能ですが、必要書類が多く手間がかかります。特に 市区町村発行の「被相続人居住用家屋等確認書」(発行に1〜2週間)や、耐震基準適合証明書、家屋の取り壊し証明書などが必要です。譲渡の翌年2月16日〜3月15日が申告期間となりますので、書類の準備は早めに進めておくと安心です。申請手順の詳細は 「空き家3,000万円特別控除の申請手順|確認書・書類・確定申告の3ステップ完全ガイド」 でご紹介しております。サントのリーガルパートナーの税理士がご相談に乗ります。

空き家3,000万円特別控除の確定申告フロー

まとめ|期限は2027年12月末、確認するなら今がタイミング

空き家3,000万円特別控除は、相続した実家の売却で 最大約609万円の税負担減 につながる、非常に強力な特例です。要件を振り返ると:

  • 建築時期:1981年5月31日まで の戸建て
  • 居住関係:被相続人が 1人で暮らしていた(老人ホーム入所後の空き家もOK)
  • 売却価格:1億円以下(相続人合計)
  • 売却時期:相続から3年後の12月31日まで
  • 耐震基準:適合または解体(2024年改正で、買主側の対応もOK)

期限は 2027年(令和9年)12月31日 までの譲渡。相続がすでに発生しているご家族にとっては、査定・販売活動・契約・引き渡しの流れを逆算すると、そろそろ確認を始めるタイミングです。

要件確認は 建築年・登記内容・相続関係 の3点でおおむね判断できます。ご不明な場合は、税理士・司法書士など専門家にご相談されると安心です。

東大阪・八尾・大阪市で相続した実家の売却相談ならサントへ

株式会社サントは、東大阪市・八尾市を中心に大阪府内全域で空き家の買取・再販を行ってきました。空き家3,000万円特別控除の要件確認(税理士・司法書士のリーガルパートナー連携)から、現況のままでの買取、確定申告サポートまで、ご家族の窓口として一貫してお手伝いいたします。査定・ご相談は無料、控除の適用判断にもご利用いただけます。

出典・参考リンク